パーキンソン病の方のためのブログ

LSVT®BIGについて ~「苦手な動作」を「できる」に変える~

パーキンソン病(PD)による症状と療法

パーキンソン病(PD)の治療では薬物療法と併用して運動療法がとても重要です。PDを発症すると上肢や下肢、体幹の筋肉がこわばり(筋強剛や固縮)、日常生活いろいろな場面で動作が行いにくくなります。また、振戦のような無意識な動き(不随意運動)が生じたり、文字を書いた際にどんどん文字が小さくなってしまう小字症と呼ばれる状態が起こってきます。

LSVT®BIG 基本的コンセプト

2018年に日本神経学会においてパーキンソン病診療ガイドラインが改訂され、運動療法として太極拳やダンスなどのほかLSVT®BIGの有用性について記載されました。これらに共通するのは、できるだけ大きく動作することによって体の動きにくさを改善することにあります。

LSVT®BIGはアメリカで開発されたパーキンソン病に特化した運動プログラムですが、もとはLSVT®LOUDという言語療法プログラムを運動療法用に応用、開発されました。その基本的コンセプトは、以下の5項目です。

①動作の幅(大きさ)にだけ焦点を当てる:
動作の幅(大きさ)への意識付けにより、最大限の大きさで動作することで可動域を増やし、その結果、動作の速度も改善する。

②感覚の自己校正:
パーキンソン病の方は運動感覚の情報をうまく処理できず、小さく遅い動作を正常と感じ、修正できないため、動作が小さくなっている。そのことを認識させることにより、大きく動作するようご本人で修正できるようになる。

③高い努力(身体的および心的):
動作を行う際は、ご本人が出せる最大限の力を出す。

④集中的な治療(頻度・反復・難度):
パーキンソン病の方は、練習量を増やさなければ運動学習が身に付きにくいため、運動の頻度や難度を上げていく。これにより筋力強化にもつながる。

⑤定量化:
どの動作を何回行うか運動回数が決められている。また、太極拳やダンスなどと異なりLSVT®BIGの使いやすさの特徴として臥位(寝た状態)、座位(座った状態)、立位(立った状態)で行えるよう、複数のバリエーションが用意されています。そのため身体状況に応じてこのプログラムを受けることができます。

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LSVT®BIG ライセンスについて

LSVT GLOBAL Inc.では、1日1時間、連続して週4日、4週の集中プログラム(週の残り3日は自主トレ)をもって、LSVT®BIGと表記していいと明言しております。私自身、そうでない場合はLSVT®BIGとは表記しないと誓約書も提出しております。日本では、2日間の集中講義によってライセンス取得が可能ですが、更新の必要がない国内のみ通用する資格(Domestic Licence)となります。(Global licenceは2年毎の更新が必要)8つの基本的な動作をもってLSVT®BIGと誤解している方もおられますが、基本的な運動パターンは自己鍛錬の部分であり、Functional Conponent Task(機能的要素課題)の一部であります。

機能的要素課題:
自主トレとして行う大きな動作を伴う体操や日常生活における、ご本人の苦手な動作の練習のことを指します。大きな腕の振りで、歩幅を意識して歩くBIG WALKもこの中に含まれます。日常生活での苦手な動作(手を伸ばす、身体を捻る、ズボンを履くなど)と食事や家事の場面での苦手な動作などを大きな動きで行う練習をします。

Hierarchy Task(階層的課題):
患者さんと目標を設定し、徐々に負荷や難易度を上げて、日常生活に必要とされる動作を一歩ずつ獲得していくことを目指します。この2つの機能的要素課題と階層的課題に、治療の大半の時間を割きなさいというのが、Global Inc.の最大の主張です。トレーニングでセラピストに求められることは、ご本人の能力を細分化して正しく評価する力とそれに合わせて、動きの最大化を引き出すコーチングのテクニックです。声掛けの内容やタイミングが重要とされています。


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弊社グッドライフケア東京 PDチームは、今現在スタッフを募集中。PDのご利用者の機能向上に努めています。私たちのチームの一員になってご利用者を支えていきましょう。
ご応募お待ちしております。

column-tatukawa.png立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>

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