パーキンソン病の方のためのブログ

多系統萎縮症(MSA)の方々も支援しています ~パーキンソン病との関連~

パーキンソン病の方に役立つ基礎知識 vol.66

パーキンソン病と似ている多系統萎縮症(MSA)
「パーキンソン病と診断されたけれど、薬の効果が今ひとつ・・・」「病気の進行が早い気がする・・・」

もし、そう感じている方がいらっしゃれば、それはもしかすると多系統萎縮症(MSA)かもれません。MSAは、パーキンソン病と同様に脳内の神経細胞が変性することで引き起こされる病気です。この病気は、不溶化したα‐シヌクレインというタンパク質が脳内に蓄積することで起こる「シヌクレイノパチー」という病気のグループに分類されます。

多系統萎縮症(MSA)に現れる主な症状と診断の変遷

MSAは1969年にGrahamとOppenheimerによって提唱された病気です。代表的な症状としては、頻尿や尿失禁、便秘、立ちくらみ(起立性低血圧)、発汗障害、睡眠中の異常行動(レム睡眠行動異常症など)などがあります。

かつてMSAは、症状によって3つの異なる病気として扱われていました。

・小脳失調を主体とする「オリーブ橋小脳萎縮症
・パーキンソニズムを主体とする「線条体黒質変性症
・自律神経障害を主体とする「シャイ・ドレーガー症候群

現在、これらすべて多系統萎縮症(MSA)という一つの病気として考えられています。この3つの病気に共通して、神経膠(グリア)細胞封入体(glial cytoplasmic inclusion;GCI)という特殊な構造が、神経細胞やオリゴデンドロサイトという細胞内で発見されたため一つの疾患(MSA)として統一的に診断されるようになりました。

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多系統萎縮症(MSA)の症状と2つのタイプ

MSAは、パーキンソン病と同様に自律神経の障害を伴うことが多いです。

・排尿のトラブル(頻尿、尿失禁)
・便秘
・起立性低血圧(立ちくらみ、めまい、ふらつき)
・発汗の異常
・睡眠中のトラブル(睡眠時喘鳴、睡眠時無呼吸、REM睡眠行動異常(RBD)、勃起障害(男性)


MSAは現れる症状によって大きく2つのタイプに分けられます。

MSA-P(パーキンソニズム症状が主体)
このタイプは、筋強剛(全身の筋肉のこわばり)の症状が特徴です。パーキンソン病でよく見られる安静時振戦(安静時の手の震え)はほとんど見られず、肩が前に出てしまう「前肩」や、頭がうなだれてしまう「首下がり」といった姿勢の異常を引き起こします。
また、体の中心にある腸腰筋や腹筋群も硬くなるため、腰が曲がり、前かがみになりやすい傾向があります。さらに、顔の表情筋もこわばることで、目や口が開けにくくなることもあります。
このタイプはPDと区別がつきにくく、病気の進行が比較的早いのが特徴です。パーキンソン病の薬であるL-dopaが効きにくいこともあり、途中で診断が見直されるケースも見られます。

MSA-C(小脳症状が主体)
このタイプは易転倒が問題となります。ふらつきやバランスの悪さが顕著に現れ、転びやすいのが特徴です。これは、小脳の機能障害によって、協調運動障害とバランスを保つことが困難になるために起こります。

どちらのタイプも自律神経系の障害を伴い、病気が進行すると、パーキンソン症状と小脳小症状の両方が混在して現れるようになります。

リハビリテーションと多職種連携による支援

これらの症状に対し、当社の専門チームは、症状に応じて筋肉の柔軟性や関節の可動性を維持するためのリハビリを迅速に行っています。

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パーキンソン病やMSAの患者は、「歩きながら会話をする」といった複数の課題を同時に処理することが難しくなり、体のバランスを保つのが難しく転倒を繰り返してしまうことがあります。そのため、患者一人ひとりの状態に合わせ、転倒を防ぐための工夫をしていきます。必要に応じて、ご自宅に設置可能な福祉用具(ベスポジなど)の活用をご提案し、安全な生活をサポートします。

症状の進行を緩やかにする支援

残念ながら、現在のところMSAを完全に治す治療法は確立されていません。主に症状を和らげるための対症療法が中心となります。薬の効果にも限界があり、症状の進行には個人差があるため、一人ひとりの状態に応じたケアとリハビリテーションが重要になります。

私たちが行うリハビリはMSAの症状の進行を少しでも遅らせるように、柔軟性、可動性、筋力、バランス能力の維持を目的としています。姿勢の変化に注意を払いながら、日々の生活動作をより安全に行えるよう、専門的な指導を行います。

呼吸や嚥下機能発声機能の維持も大切です。早い段階から言語聴覚士によるサポートも導入しています。症状が進行し、日常生活のさまざまな動作に介助が必要になった場合は、リハビリテーションだけでなく、介護士によるトイレ介助や入浴介助も導入し、日々の生活をサポートします。

私たちは、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、看護師、療法士、介護士が連携し、呼吸障害や摂食障害伴う晩期のMSAにも対応できる体制を整えています。

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多系統萎縮症(MSA)について、もっと詳しく知りたい方、ご相談を希望される方は、ぜひお問い合わせください。


(multiple system atrophy: MSA)

MSAに関する過去ブログ(vol.17、56)

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column-tatukawa.png立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>

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病の進行具合と未来像を予測しながら、リハビリの具体的なアドバイスをいたします。
パーキンソン病の特徴にあわせた自立度の高い方向けのリハビリプログラムを設定しています。

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