パーキンソン病の方のためのブログ

2025/03/14
睡眠のリズムと脳回路 ~パーキンソン病との関連~
パーキンソン病の方に役立つ基礎知識 vol.65
『人はなぜ眠るのか??』
一つは脳の疲労を回復させるため。もう一つは記憶の整理や定着のために必要だと考えられており、私達は毎日ほぼ同じ時間に眠って、同じ時間に目覚めます。
睡眠のリズム
このような規則正しい睡眠のリズムは、日中に蓄積された疲労による「睡眠欲求」と体内時計に指示された「覚醒力」のバランスによって起こるものです。
体内時計はメラトニンの分泌を促して、眠気を誘います。朝方になると覚醒作用を持つ副腎皮質ホルモンの分泌が高まり、脳の温度が上昇していきます。脳は活動時は高い温度を保ちますが、夜になると熱を逃がして脳の温度を下げ、眠りにつきます。
眠りの維持のために、体内時計は生体機能を総動員して対応しています。
リズムを整える成分とホルモン
メラトニンには上記の睡眠・覚醒リズムに加え、季節のリズム、ホルモン分泌のリズムといった概日リズム(サーカディアンリズム:24時間周期)を調整する作用があり、毎朝日光を浴びると、リズムがリセットされ、睡眠の質も改善すると考えられています。また、セロトニンという物質は脳から分泌される睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となっているため、日中に太陽光を浴びてセロトニンを作っておくと良いとも言われています。
睡眠サイクルにみられるPDの運動症状の予兆
さらに、睡眠にはサイクルがあり、夢を見る「レム睡眠」と大脳を休める「ノンレム睡眠」が約90分周期で変動し、朝の目覚めに備えて準備をします。
レム睡眠のレムとは、REM:Rapid Eye Movementのことで、文字通り、眼球が睡眠中に上下左右に速く動いており、この状態の時に夢を見ていることが多く、骨格筋が弛緩して脱力を起こしていることが特徴です。パーキンソン病(PD)では、このレム睡眠の異常が見られ、寝ているときに大声を出したり、動き回ったり、隣で寝ているパートナーを蹴ったり、殴ったりといった行動が見られます(レム睡眠行動異常)。PDの運動症状が出現する10年ぐらい前からこの睡眠障害が生じることが多く、この症状が見られるとかなりの確率でPDを発症すると言われています。
「レム睡眠行動障害」に関与する神経細胞
最近、筑波大学の研究グループが、「レム睡眠」を誘導する神経回路を同定し、この回路を構成する神経細胞の異常によって「レム睡眠行動障害」が引き起こされるメカニズムをマウスを使った実験によって明らかにしました。
マウスの延髄にあるレム睡眠を誘導する神経細胞は、急速眼球運動を担う脳領域(動眼神経核)、大脳皮質の活性化を担う脳領域(視床正中核)、海馬シータ波の生成を担う脳領域(内側中隔核)へと神経接続を形成しており、橋にあるレム睡眠を誘導する神経細胞は、脊髄を介して骨格筋を制御する運動神経につながる回路を形成していました。
人の死後脳でも調べた結果、橋(きょう)のレム睡眠神経細胞の数が減っており、α-シヌクレインの凝集体の蓄積が生じていることも確認されました。
これによって、PDに伴う「レム睡眠行動障害」には橋の神経細胞が関与していることが明らかとなりました。
α-シヌクレイン・・・・・・病的な凝集体が原因となってパーキンソン病などを発症することが知られているタンパク質の一種。
橋・・・・・・脳幹を構成する一部。上部の中脳や大脳と下部の延髄以下の部分の連絡路。
睡眠に関する過去ブログ(vol:17)
参考文献:A pontine-medullary loop crucial for REM sleep and its deficit in Parkinson's disease. Cell 【DOI】 10.1016/j.cell.2024.08.046
立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>
病の進行具合と未来像を予測しながら、リハビリの具体的なアドバイスをいたします。
パーキンソン病の特徴にあわせた自立度の高い方向けのリハビリプログラムを設定しています。