お看取りについてのブログ

最期までご自宅で寄り添われたご家族様

vol.6  T様/女性(75歳)

お気持ちに寄り添い「待つ」というケア

T様は、脳梗塞と同時に膵尾部癌末期であると医師から診断され、治療のために一年半入院されていました。ご自宅に戻られた時には、お話することができず、ほぼ食べることもできないご状況でした。
娘様は「1日でも長く生きて欲しい」というお気持ちがとても強く「麻薬を使うと意識が低下すると聞きました。できるだけお話ししたいから、麻薬はまだ使いたくない」とおっしゃられ、T様ご本人も同意されていました。娘様のお気持ちに寄り添うため、麻薬の使用については「待つ」というケアからスタートし、時折起こる痛みにも湿布やマイルドな痛み止めを使用して対応しました。

そうした中、T様に食べたいというお気持ちが奇跡的にでてこられ、食べられなかった固形のお食事もりんごやスイカなど小さく刻めば食べる事ができるようになりました。しかし、次第に痛みとせん妄が強くなってこられ、医師と連携しながらの集中的な対応が必要となりました。

痛みには、麻薬のコントロールが重要で、鎮静のため使用するタイミングの見極めが必要です。今回の麻薬導入の流れは、看護師が「待つ」状況から始まり、ご家族様のお気持ちに寄り添ってケアする中で「ご納得されての導入」となりました。


ご家族の語りかけの中、穏やかに永眠

ある日、T様が強い痛みを訴えられたため鎮静の座薬を使用、深夜にやっと穏やかになられご家族様も眠れた次の日の朝「瞼が開いた状態で声をかけても反応がない」とご家族様から看護に緊急のお電話がありました。お電話の向こうで娘様は「寝ちゃってごめんね」と泣き崩れておられました。ご家族様は、もう命が長くないことを感じられているご様子で、T様のお傍から離れず、ご主人様と娘様で交互にお話をされていました。その後、呼吸停止のご連絡があり、ご自宅で穏やかに永眠されました。

ご家族様から「本当に皆さんのおかげです。病院ではこういった時間は持てなかったかもしれないね」とおっしゃっていただけました。娘様からは更に「もう皆さんと会えないことが淋しいです」と感謝の言葉をいただきました。

ごめんねからありがとうの言葉へ

ご家族様のお言葉が「ごめんね」から「ありがとう」へ変わることは、ご本人のご希望に最期まで寄り添うことができたご家族様の安堵感の現れだと思います。
「昨日の辛そうな顔は、今まで見たことがないような表情だったけれど、看護師さんがおしりからのお薬を上手にしてくれてね。助かったよ」とおっしゃるご家族の言葉は、穏やかな最期に立ち会われた証であったのではないかと感じました。

長期間ご家族様と向き合い介入調整やケアを行なった看護師、最期の鎮静を丁寧に行なった看護師、福祉用具による素早いエアーマット導入対応。また、T様のご希望に沿うよう毎日清潔にケアした介護士、医師と連携しながらご要望があればすぐに駆け付けプラン調整したケアマネなど、私たちチームのケアは、T様とご家族様にとって「納得できる形での看取り」とすることができたのではないかと思います。

銀座のママさんだったT様。大好きなお着物はお棺の中でお召しになりたいとの事でした。最期のお姿にはご家族でバリ旅行に行かれた際のお洋服を希望され、ご家族様と一緒に整えさせていただきました。

これから先も、ご自宅だからこそできる「選べる生き方」を、私達は大切にして参ります。
ご縁をいただき感謝いたします。


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