パーキンソン病の方のためのブログ
2026/06/17
パーキンソン病と脳内炎症との関係 ~日常生活でできる対策~
パーキンソン病の方に役立つ基礎知識 vol.70
はじめに
パーキンソン病(PD)は、脳の中脳にある「黒質(こくしつ)」という場所のドパミン作動性神経細胞が傷ついて減少してしまう病気です。これによって、ドパミンという神経伝達物質がうまく行き渡らなくなり、スムーズに体が動かせなくなるなどの運動障害が引き起こされます。
パーキンソン病には遺伝性のもの(家族性)もあり、さまざまな関連遺伝子が突き止められていますが、実は大部分は遺伝に関係のない「孤発性(こはつせい)」と呼ばれるもので、その原因ははっきりとは分かっていません。
病気の進行に関わる「α-シヌクレイン」
パーキンソン病の大きな特徴として、脳内に「レビー小体」という異常なたんぱく質の塊が蓄積することが挙げられます。この塊の主な成分が「α-シヌクレイン(α-Syn)」です。 このα-シヌクレインの凝集体が、細胞内のミトコンドリアやリソソームといった器官の働きを邪魔して、神経細胞を死に至らしめると考えられています。
これまでは、すでに塊になったα-シヌクレインが細胞から細胞へと移り(細胞間伝播)、周りの膜を壊して新たな塊を作る「鋳型(いがた)」となることで病気が進むと考えられてきました。 しかし最近の研究(参考文献 ※1.)では、まだ塊になっていない状態のα-シヌクレインが、脳内のリンパ系を通じて離れた場所へと速やかに運ばれ、それを取り込んだ神経細胞の中で時間をかけてじわじわと凝集していくことも報告されています。

脳内で起こる炎症の悪循環
① ミクログリアの活性化
α-シヌクレインが、脳内のマクロファージの役割を持つ免疫細胞「ミクログリア」を刺激して活性化させます。
② 炎症物質の放出
活性化したミクログリアから炎症性サイトカインが放出され、脳内で神経炎症が引き起こされます。
③ アストロサイトの誘導と細胞の損傷
これらの炎症物質は、神経細胞を直接傷つけるだけでなく、別の脳細胞(アストロサイト)も刺激してさらに炎症を長引かせます。
このように、「慢性的な神経炎症」と「ドパミン神経細胞の減少」が互いを強め合う悪循環になってしまうことで、病気が進行していくのです。
便秘症状と脳内炎症のつながり
パーキンソン病の早期症状としてよく知られる「便秘」ですが、近年の研究(参考文献 ※2.)によって、この便秘も脳内の炎症と関連していることが、PET(陽電子放出断層撮影)という画像を指標とした研究で明らかになってきました。動けないといった運動症状が出る前の段階から、すでに脳内での炎症変化と深く結びついていることが示唆されています。
これからの治療と、日常生活でできる対策
現在、パーキンソン病の治療は減少したドパミンを補う「対症療法」が主流ですが、こうした研究を背景に、「脳内の炎症を抑える治療法」の開発も現在進められています。 私たちが日常生活の中で取り組める身近な対策としては、食事による「抗炎症予防」がおすすめです。
毎日の食事の工夫で炎症を抑えるヒントについては、過去のコラム(コラム34:パーキンソン病と食事)でも詳しくご紹介していますので、ぜひあわせて参考にしてみてください。
参考文献:
1. Fujita et al., 2023. DOI: 10.1016/j.celrep.2023.112962
2. Mov Disord. 2026 Feb;41(2):455-465. doi: 10.1002/mds.70102. Epub 2025 Nov 13.
立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>

病の進行具合と未来像を予測しながら、リハビリの具体的なアドバイスをいたします。
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