お看取りについてのブログ

「お家にかえりたい」願いを叶えた最後の2日間

vol.17  A様/男性(80歳)

A様とご家族の想い

A様は病院に入院されていましたが、最後を自宅で過ごしたいという強い願いがあり、亡くなる前日にご自宅へ戻ることができました。


自宅に戻ったA様は、「お家に戻りましたよ。分かりますか?」という声に、「そりゃぁ、分かりますよ」と答えました。そして、「ひとつはね、妻がいるからですよ、これはもうね・・・」と、聞こえないくらいの声で一生懸命に奥様への想いを語りました。
その姿に、「つらいこともたくさんあったけれど、本当に主人と生きてきてよかった」と涙ぐむ奥様。
A様は「親父とおふくろといて、親父が築き上げたものがあったんでね・・・」と、今までの人生で一番幸せだったことも語りました。
涙ながらに見守る奥様、パパに会いたかったよと泣き崩れる娘様、その様子をしっかりと見守る息子様の姿がそこにはありました。
夕方にはお孫様も駆けつけ、「おじいちゃん大丈夫?」の質問に、「おじいちゃんはとってもすごい人なんだよ。おじいちゃんが頑張ってるのわかるね」と頭をなでると、お孫様も「うん」と返事をしました。

最期の時間

夜になり、A様の呼吸状態に変化が現れ、せん妄でベッドサイドに座り、苦しそうな様子をみせました。医師と看護師が迅速に対応し、点滴や鎮静薬の投与を行いました。

2回目の訪問の18時から息子様はずっと付き添い、「こんなに話したことはない、また、ベッドサイドに座ったんです」と話されました。


翌日、A様の呼吸状態はさらに悪化し、苦しそうな様子でした。「これ以上の処置はせず、残された時間をゆっくりとご家族様の大切なお時間にしませんか」とご提案すると、長男様は「何もできることがなければ、このまま見守ります」と話されました。
A様はご家族に見守られながら静かに息を引き取りました。

最期の2日間を寄り添ったご家族

ご自宅に戻り残された時間は、結果2日間。
「前日にたくさんお話をしたことがウソのよう。主人と結婚してよかったと伝えることができて、とても濃厚な時間が過ごせました」と奥様。

お着替えしたスーツは奥様がお見立てし、オーダーメイドで作ったお気に入りのスーツ。その後、介護士のKさんと一緒にエンゼルケアを行い最期のネクタイも整えました。お顔の保湿は娘様と息子様で行いました。

ご主人の生前、奥様は変化を受け止めきれず強い不安があったため、最期の日は、息子様も娘様も一緒に傍にいてくださいました。

A様が最期の場所のお家で生きぬく姿。残された時間を図ることはできません。「そのお気持ちに添えられたこと」それは、ご本人様にとっても、ご家族様にとっても穏やかな最期であり、次に歩んでいかれる方たちのためでもあると改めて感じます。

感謝の言葉

担当のSケアマネ、S看護師と退院調整を早くに整えてくださったこと、当日、夜間看護師のM様、介護士Kさん、福祉用具のKさんとたくさんのチームに支えられました。 関わられたスタッフの皆様 濃厚な時間を共に関わってくださり大変ありがとうございました。 お疲れさまでした。

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