パーキンソン病のフィットネストレーニングの必要性 パーキンソン病の方に役立つ基礎知識vol.47

パーキンソン病(PD)は、世界中で何百万人もの人々が罹患している神経変性疾患です。運動はPD患者さんにとって症状に対する最良の治療法の一つであり、生活の質を大幅に改善させるのに役立ちます。

PDの4つの主要な運動症状

・振戦(震え)
・筋強剛
・運動緩慢
・姿勢の不安定(バランスの問題)


これらの症状が進行すると、歩行障害や言語の問題が生じてきます。さらに、不随意に痛みを伴う筋肉の収縮であるジストニアを経験するようになり、首下がりや腰曲がりなどの異常姿勢を引き起こします。

初期段階でのPDでは、これらの症状や障害も軽度ですが、進行期になると立位や歩行が不安定になり、転倒もしやすくなります。晩期では車椅子移動で寝たきりの状態になります。

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PD患者さんはバランスの問題を抱えていて転倒しやすいため、骨量と強度が不可欠です。強化された骨は転倒した場合でも骨折しにくくなります。
運動そのものはうつ状態や不安の軽減など、PDの非運動症状である心理的健康の改善に影響し、生活の質を高めることに役立ちます。

適切に計画された運動プログラムによって、身体機能・バランス能力・歩行スピード・歩幅の改善が期待されます。このように運動はPDにとって症状を改善する適した方法ですが、それだけでは不十分です。運動の効果を最大限に発揮するためには、日常生活全体に活動的なライフスタイルを過ごす必要があります。

運動プログラムのポイント

アメリカでは週あたり150時間の中等度の強度の有酸素運動、週に2日の筋肉強化運動が推奨されています。その際、重要なことは運動に対するモチベーションを高く保つことにあります。
・単調さや退屈さを最小限に抑えながら、様々なエクササイズを組み合わせる。
・個人にとって、挑戦的だが達成可能な目標を設定する。
・グループエクササイズでは安全性を確保しながら行うよう推奨している。
・時間の経過とともに徐々に運動強度を上げていく。

後期のPDでは初期段階とは多少異なり、移動や歩行に補助が必要な場合があります。ここでは初期の人とは異なる身体能力で運動目標を設定していくことになります。

姿勢変化に伴う動作の困難さ

関節の可動域と筋肉の柔軟性を高める、姿勢やポジショニングに焦点を当てていきます。

ストレッチ

体幹の捻れ、肩関節ー胸郭の可動域の確保、股関節伸展の可動域の確保に焦点を当てていきます。

下肢筋力の強化

複数の筋群を同時に使っての動作、スクワット、ステップアップ、フロントランジやブリッジなどのエクササイズが有効です。個別のトレーニングでは、Lドパ製剤を服用してから1時間後ぐらいに運動を始めるのが良いでしょう。

可能な限り混雑した空間は避け、転倒を予防する必要があります。声掛けの大きさやタイミングにより、姿勢や大きな動きを意識付けさせることも可能となります。
バランスに障害を抱えている場合は、常に近くに立ってサポートすることが必要になります。安定した椅子を側に置いて、不安定な動作のときには支持させることも転倒予防に重要です。
グループトレーニングの場合は、参加人数を比較的小さなグループに保ち、同じレベルの身体能力の方々で行うと良いでしょう。
安全性に配慮しながら、エクササイズを段階的に進めていくことが非常に重要なこととなります。

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column-tatukawa.png立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>