悪性症候群について パーキンソン病の方に役立つ基礎知識vol.41

悪性症候群とは、フランス語の"syndrome malin"から名付けられました。この症状は、フェノチアジン系薬をはじめとする向精神薬使用中の患者に見られ、原因が不明で致死的であったために、この名前がつけられました。

1956年にFrank. Ayd氏fatal hyperpyrexiaとして症例を報告し、1965年にDelayとDeniker氏らが複数の症例を提示し、Neuroleptic malignant syndromeという英名で報告しました。悪性症候群があまり知られていなかった当初は、的確な治療がされず死亡率は高い状況でした。

悪性症候群の主な症状は次の通りです。

1.38℃以上の発熱
2.錐体外路症状(筋強剛、振戦、構音障害、嚥下障害など)
3.精神症状(意識の変容、せん妄などの意識障害)
4.自律神経障害(頻呼吸、頻脈、血圧変動、発汗、尿閉など)
5.その他(横紋筋融解症、脳波の徐波化)


原因となる薬剤は、中枢神経でドパミンD2受容体を阻害する作用を持つ全ての薬剤が挙げられ,最も多いものは抗精神病薬です。しかし、抗パーキンソン病薬の使用・減量・中断に伴っても発症します。

ドパミン受容体遮断仮説

悪性症候群の病態としては、一般に黒質線条体ー中脳辺縁系ー視床下部のドパミン作動性ニューロンにおけるドパミン受容体の遮断が発症のトリガーとされています。つまり、悪性症候群を誘発する薬物が向精神薬であること、パーキンソン病の患者さんがドパミンアゴニストの中断を契機に本症候群を発症することがあること、治療薬としてドパミンアゴニストが効果があることから、ドパミンD2受容体の急激な遮断が関与していると推測されています。

ドパミン・セロトニン不均衡説

また、脳内においてドパミンとセロトニンは拮抗的に働いていると考えられています。悪性症候群の発症例では、髄液のセロトニン代謝産物の高値が症状改善とともに正常化することから、ドパミン系の機能低下とセロトニン系の機能亢進が関与している可能性があります。

他にもノルアドレナリン(ノルエピネフリン)やコリン系などの神経伝達物質の関与も推測されています。

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column-tatukawa.png立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>