パーキンソン病と食事(栄養) パーキンソン病の方に役立つ基礎知識vol.34
Q. パーキンソン病の進行や症状を緩和する食事療法はあるのでしょうか?
A. 残念ながら、パーキンソン病に効果的な食事療法があるわけではありません。
Q. 食べ物によってパーキンソン病の発症リスクを低下させることは可能なのでしょうか?
A. 抗酸化物質がパーキンソン病の発症・進行リスクを低下させると考えられています
パーキンソン病の発症仮説に、「ミトコンドリア仮説」というものがあります。
ミトコンドリアは身体で使われるエネルギーであるATP*を産生するときに、活性酸素種を作り出し、自身を傷つけてしまいます。障害されたミトコンドリアが取り除かれないことで神経細胞死が起こると言われています。活性酸素を取り除く物質、すなわち抗酸化物質がパーキンソン病の発症・進行リスクを低下させると考えられています。抗酸化物質には色々な種類があります。
抗酸化物質の種類
- スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)(酵素)
- グルタチオンペルオキシダーゼ(酵素)
- カタラーゼなどの体内生成抗酸化物質(酵素)
- アスコルビン酸(ビタミンC)
- α―トコフェロール(ビタミンE)
- ポリフェノール
- 尿酸
- メラトニン
食物に含まれるポリフェノールには数多くの種類があり、抗酸化作用が強く注目されています。
ポリフェノールの種類
- 緑茶に含まれるカテキン
- 赤ワインに含まれるレスベラトロール
- 胡麻に含まれるセサモール
- ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン
- 大豆に含まれるイソフラボンやサポニン
- そばに含まれるルチン
- 発酵茶(紅茶・ウーロン茶)などのテアフラビンの総称であるタンニン
これらの抗酸化作用は、20代をピークにして加齢とともに低下していきます。
そこで「食」によって抗酸化作用のある物質をバランスよく摂取していくことが、老化や加齢に対するアンチエイジングとして重要になっていきます。
バランスよく摂取したい食品
①緑黄色野菜や果物から摂れるビタミンC
②植物油(ひまわり油や紅花油など)やピーナッツやアーモンドなどから摂れるビタミンE
③ポリフェノール類
④緑黄色野菜や果物など多くの食品に含まれるβ-カロテンやリコピン
⑤えびやかになど甲殻類や、さけ・ますなど魚類がもつアスタキサンチン
⑥赤パプリカに含まれるキサントフィルなどのカロテノイド
近年、パーキンソン病の発症リスクに地中海食が効果的であるとの報告があります。
地中海食とはイタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国々の人が食べている伝統的な料理です。
地中海沿岸の国々の食事
①果物や野菜を豊富に使う
②乳製品や肉よりも魚を多く使う
③オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う
④食事と一緒に適量の赤ワインを飲む
パーキンソン病を長く患うと必ず筋肉量が低下していきます。
筋肉量を維持するために効果的にタンパク質を摂取するよう心がけましょう。
ただしタンパク質の摂取には工夫が必要です。
それはメネシットなどのL-ドパ製剤と競合して腸管からの吸収率を低下させてしまうからです。
少量のタンパク質を頻回に摂取する方法や夕食時に1日の必要量を大量に摂取するなど、量とタイミングを工夫して摂取しましょう。
立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>