2024/01/09
パーキンソン病コラム
女性の身体活動とパーキンソン病との関連 パーキンソン病の方に役立つ基礎知識vol.33
パーキンソン病は、中脳黒質のドーパミン作動性神経細胞が減少し、線条体でのドーパミン産生が低下して円滑な運動が行えなくなる病気です。手足の震え(振戦)、こわばり(筋強剛)、動作が鈍くなる(動作緩慢)、転倒しやすくなる(姿勢反射障害)を主症状とする進行性の疾患であります。
運動によってパーキンソン病のリスクが軽減するという報告はこれまでにもありましたが、男性のみに限定されており、女性の身体活動とパーキンソン病発症リスクとの関係はわかっていませんでした。
2023年5月に「Neurology」掲載された論文では、9万人を超える女性を平均17.2年のコーホート追跡の結果、1,074人がパーキンソン病の発症を確認することができました。また年齢、BMI、食習慣などの影響を調整後、運動量の最も多い上位4分の1の群は下位4分の1の群に比べて、パーキンソン病の発症リスクが25%有意に低かったという調査結果が報告されました。
(Portugal B et al., Neurology. 2023 Jul 25;101(4);e386-e398. doi: 10.1212
/WNL.0000000000207424.)
パーキンソン病は、遺伝的な背景(PARK遺伝子等)と環境要因が複雑に絡み合って発症する病気と考えられています。この研究結果を踏まえ、パーキンソン病の発症リスクを軽減するためには「比較的人生の早い段階から運動する習慣を身につけることが大切である」と結論づけられています。
立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>