高齢者の転倒リスクと予防:開眼片足立ち保持時間 パーキンソン病の方に役立つ基礎知識 vol.54
開眼片足立ち保持時間
高齢者の転倒予防において、開眼での片足立ち保持時間が重要な指標であることが示唆されています。加齢とともに保持時間は徐々に低下しますが、60歳代以降になると、特に顕著に保持時間が短くなります。運動器疾患学会では、15秒以下を転倒リスクが高いと判断しています。
片足保持ができなくなる原因
片足立ち保持ができなくなる主な原因は、静的バランス機能の低下です。静的バランス機能とは、支持基底面内で重心の動きを伴わない姿勢を保持する能力です。
具体的には以下の4つが挙げられます。
・足部のアーチや足趾の構造変化
・重心を支える筋肉の筋力低下
・下肢の関節の柔軟性の低下
・平衡感覚(三半規管や足底感覚の機能)の低下
パーキンソン病患者における片足立ち保持の低下
パーキンソン病患者の場合、上記の原因に加え、ジストニアやジスキネジアなど特有の症状によりさらに片足保持が難しくなります。
1.足部の変形
ジストニアの症状により、Ⅱ~Ⅴ趾が底屈してハンマートゥ様になり、母趾が背屈して小趾側の重心に偏ってしまいます。また、足の縦と横のアーチも崩れ、扁平足様になります。
2.足首の動揺性亢進
ジスキネジアの出現により足首の動揺性が高くなり、足部を固定することが難しくなります。狭い支持基底面の中で足趾(そくし)の力を使って保持することができなくなります。
3.股関節や膝関節の関節可動域の制限
関節や膝関節の関節可動域の制限や筋力低下により、適切な姿勢を保持することができずバランスを崩しやすくなります。
転倒予防のためのリハビリテーション
パーキンソン病と診断されたら、まずはバランス保持能力を維持することに努めましょう。
以下のリハビリプログラムが有効です。
・足趾(そくし)の柔軟性向上
・つま先立ちの保持
・前方、側方、後方に足を1歩大きく踏み出したときの動的安定性の向上
・下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)、ハムストリングス(大腿の裏の筋肉)、大腿四頭筋(大腿の前面の筋肉)や腸腰筋(腰椎や骨盤から大腿部へ付着する筋肉)の柔軟性・筋力保持
毎日のリハビリで不安定性や筋力低下を予防するとともに、左右差についても意識しましょう。転倒予防のためには、日々のバランス保持能力と筋力低下を予防することが大切です。
立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>