多職種連携介入の必要性 パーキンソン病の方に役立つ基礎知識 vol.61
パーキンソン病の進行とその影響
パーキンソン病(PD)患者は、病気が進行するにつれて身体能力と認知能力が低下し、日常生活に支障をきたし、自立した生活が困難になります。進行期には、便秘や血圧変動などの非運動症状に加え、PD治療薬の長期服用に伴うジスキネジア*やウェアリングオフ*などの副作用に悩まされます。
パーキンソン病と寿命の関係
パーキンソン病そのものが直接の原因で亡くなることはありません。発症年齢と経過年数には負の相関があり、発症年齢と死亡年齢には正の相関があります。60歳未満で発症した場合は早くに亡くなる傾向がありますが、60歳以降に発症した場合は、健康な方と寿命はほとんど変わらないとされています。
PD患者の約半数は肺炎で亡くなりますが、肺炎そのものが死亡時の平均年齢や発症から死亡までの経過年数を早めるわけではありません。また、骨折の既往は活動量の低下および日常生活動作(ADL)低下を招き、寿命が短くなる因子となります。
晩期パーキンソン病の特徴と課題
晩期PDになると、運動症状としては体幹運動障害が顕著となりバランスを保つのが難しくなり、転倒を繰り返すようになります。また、嚥下障害が生命維持に関わる問題につながることもあります。さらに認知機能が低下すると、QOL(生活の質)や、介護の負担も大きくなります。
晩期PD患者の生活を少しでも快適に過ごせるように、適切な服薬管理とリハビリテーションに加え、日常生活をサポートしていくことが、私達在宅支援事業者の大切な役割です。
栄養と精神面でのサポート
PD患者は体重減少が問題です。フレイル・サルコペニア*への対策として栄養面でのサポートが重要です。また、運動症状と同時に精神症状も問題となり、高齢化に伴う認知機能の低下やPD認知症の問題も生じます。患者本人への心理・精神面でのサポートと同時に、介護者である家族の支援も必要です。
多職種連携による支援体制
私たちは、日本パーキンソン病・運動器疾患学会認定の「パーキンソン病療養指導士」資格を持つ療法士の指導の下に、介護福祉士、看護師、療法士、福祉用具専門相談員、ケアマネジャーと共にPD患者の生活支援に携わっています。晩期PD患者で、嚥下障害が重度化し、誤嚥性肺炎を繰り返す場合、胃瘻を増設することがあります。術後の誤嚥性肺炎の再発を防ぐためには、頻回の喀痰吸引や体位変換、口腔ケアを含む看護・介護体制が重要です。
デバイス補助両方と在宅支援ネットワーク
晩期PDでは、胃瘻(いろう)も含めたデバイス補助療法により、薬物療法をコントロールします。レボドパ・カルビドパ製剤を持続的に投与する経腸療法や、近年開発された皮下注入法(ヴィアレヴ)を選択する患者もいます。
往診医と連携し、晩期PD患者の在宅生活を多職種で見守っていくネットワークの構築が急がれています。
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*ジスキネジア・・・・・・不随意運動自分の意志とは関係なく、体の一部が勝手に動くこと
*ウェアリングオフ・・・・・・薬の効果が切れて症状が現れること
*フレイル・・・・・体重減少・歩行速度低下・握力低下・易疲労性・活動レベル低下
*サルコペニア・・・・・タンパク質の摂取不足・運動量低下
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立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>