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パーキンソン病の方に役立つ基礎知識 vol.19 嗅覚障害

嗅覚障害

嗅覚とは、ヒトの五感の一つで、「におい」を感じる感覚のことです。「におい」は鼻の奥の方にある、嗅粘膜で感知します。ここは嗅神経という神経の先が嗅繊毛という形になって、鼻の中の空気の通り道に張り出しています。先端は粘液で覆われていて、G蛋白共役型受容体*、別名7回膜貫通受容体がヒトでは約400種類あることが知られています。

「におい」分子(においの素)がここに到達すると、それぞれの受容体に結合して、嗅神経を介して信号を大脳に伝え、「におい」を嗅ぎ分けられると考えられています。
大脳辺縁系*に直接投射するので、「におい」は感情と結びつく情動や記憶に関わりがあります。嗅覚障害はこの感覚に何らかの異常が生じている状態を指します。

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3つの嗅覚障害

・副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎による気導性障害
・ウイルス感冒や薬剤による障害で引き起こされる嗅神経性障害
・脳の器質的障害(脳挫傷や脳腫瘍、脳出血など)で引き起こされる中枢性障害


パーキンソン病では、運動症状の発症に数年前~7年ほど先行して嗅覚低下が生じることがわかってきており、診断上の参考とされています。嗅覚の低下を自覚していない人もいますが、パーキンソン病では80~90%と高頻度で発生しています。この嗅覚低下は、嗅神経から上行する嗅球に、α‐シヌクレインというタンパク質の異常な蓄積が原因と考えられています。

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注釈

G蛋白共役型受容体・・・細胞膜上で神経伝達物質やホルモンを認識する生体センサー。
脳辺縁系・・・海馬、扁桃体、帯状回などいくつかの脳組織の複合体。人間の脳で情動の表出、意欲、記憶や自律神経活動に関与している。


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column-tatukawa.png立川 哲也
<理学療法士、PD 療養指導士、生命科学博士、LSVT®BIG ライセンス認定者>

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